ケース1:底地売買の場合
→借地権や底地は、一般的に取引される土地(更地)の価格とは全く異なります。
土地を借りてそこに住宅を建てて住んでいる人(借地人)がその土地(借地人がいる土地の所有権を底地といいます)を購入する場合(地主から見れば、借地人に土地を売却する場合)には、従来の借地契約上の制限がなくなることなどから、当該土地の価値が増加します。
したがって、買い手である借地人にとっては、底地を通常の価格(これを「正常価格」といいます)よりも高い価格で買っても損をしません。
違う言い方をするならば、地主が借地人に土地を売却する場合には、他人に売るよりも高い価格で売却するのが妥当なのです。
ただし、注意しなければならないのは、売却する土地はあくまで底地ですので、価格は底地価格であって、更地価格ではないということです。
下図のとおり、借地人は借地権という権利を持っているため、底地価格は更地価格よりも低くなっているのです。
ケース2:隣地売買の場合
→『隣りの土地は3倍出しても買え』という不動産格言があります。
これは3倍の値段が適正という意味ではなく、そのくらい価値があるものだという意味です。
ある土地を隣接地と合わせた(これを併合といいます)場合、併合前のそれぞれの土地の価額の合計額よりも高い価格となる場合があります。
例えば、下図のように、A地(不整形地)の所有者が隣接地であるB地(不整形地)を購入すると、長方形のC地となります。
通常、土地の形は長方形の方が価値が高いので、A地の所有者にとっては、B地を購入するメリットが大きいため、第三者間での取引価格よりも高い価格で購入しても損をしません。
違う言い方をすれば、B地の所有者にとっては、隣接地所有者であるAへの売却価格は第三者の場合よりも高い価格でなければ、あえてAへ売却する必要がなくなります。
このような場合、B地の所有者がA地の所有者へ売却する価格は第三者間取引における適正な価格(正常価格)よりも高い価格(限定価格)であるのが妥当な価格となります。
ケース3:分割売買の場合
→ある土地の一部を分割して売却しようとする場合には、残地の利用効率が低下し、減価が生ずることがあります。
このような場合には、当該土地の所有者は残地の減価分の補償を受けない限りその土地の一部を分割して譲渡しようとはしなくなります。
下図を例に取ると、A地(長方形地)の所有者は、土地の一部であるC地を売却することにより、残地であるB地が不整形地となります。
通常、土地の形は長方形の方が価値は高いので、自分の土地の価値が落ちた分の補償を上乗せした価格でなければ、あえてC地を売却したいとは思えません。
いずれの場面でも、重要なことは同じです。
『その不動産の適正な価値を知ること』
これに尽きるのです。
不動産の鑑定評価は、不動産鑑定士しか行うことはできません(不動産の鑑定評価に関する法律第36条)。
不動産屋さんの無料査定は鑑定評価には該当しないため、適正価格である保証はないのです。
何のために、どのように鑑定評価書を活用したいのかをよくお考え頂いた上で、タダで不動産屋さんからもらえる「査定書」で済ますべきか、それとも料金を払ってでも不動産の「鑑定評価書」を取得すべきなのかをじっくり考えてみてください。